mgudn's

髷であり曲げでもある。

【将棋】 電王戦ルールがソフト貸し出しありになった理由

電王戦Final 第一局 終了後に Apery開発者の方が

事前貸し出しルールについて多少語っていました。

 

電王戦を見ている方、参加されている方(開発者)が何故このルールが導入されたか

判っていない方が多い様な気がします。

 

事は第一回電王戦まで遡ります。

米永永世棋聖ボンクラーズと対戦する際にソフトを貸し出しています。

練習環境の提供: A級リーグ指し手1号

に詳細が書いてありますが、その際に

1 入玉処理は削除。

2 評価関数を入れ替え。

3 コンパイラの変更。(処理速度が落ちる)

4 本番はPC複数台 練習機は1台

 

現在の電王戦出場ソフトは指し手にランダム性を持たせる事に

開発者が工夫を凝らしていますが、当時の開発者の狙いも

練習と本番で全く同じ進行になる事は避けたいと思って上記の行動に出ました。

 

翌年の第二回電王戦にこの問題が引き継がれます。

 

当時のソフト提出は開発者に決定権がありました。

ほぼ本番に近い物 1年前の物 貸し出しを良しとしない方もいました。

 

そして、その弊害が 第四局  塚田泰明九段 vs Puel​la α (旧ボンクラーズ

で表面化します。

 

塚田九段に貸し出したソフトは米永永世棋聖に貸し出したソフトと同一でした。

このソフトで練習対局を行っていた塚田九段はPuel​la α と言うソフトは

王手でもされない限り、囲った後の玉は基本的には動かない

と誤認識して対局に臨みます。

 

第2回 将棋電王戦 第4局 塚田泰明九段 vs Puella α - 2013/04/13 09:30開始 - ニコニコ生放送  記者会見の質疑応答を見ていればこの辺りの事は判ります。

 

そして、この対局や質疑応答での発言が貸し出しルールに繋がっていきます。

 

一つは 第三回電王戦のルール作成に当たって、塚田九段など出場棋士

意見を求めた事。

もう一つは 開発者がコンピューター将棋の強さは

パソコンの台数に比例するので、お金で強さを得られると発言した事です。

 

電王戦ルール - mgudn's で私の想像で誰がルールを作ったか?書いていますけれど

ドワンゴ社としては、ソフトを使って興業する権利面を押さえる事と、

パソコンの在庫を持たなくて良いメリットは譲る理由が無く、

統一ハードの導入は ドワンゴの都合。

 

ソフトの貸し出しがルールに組み込まれた理由は、団体戦で負けた将棋連盟が

プロ棋士に有利なルールを作った と思っている方が居るのだと思いますが、

残念ながら、開発者の行動に起因します。

 

当時のPVで Puella α の開発者は 

(レーティング的には) ソフトは名人を超えている

と発言しています。

この発言に自信があるなら、細工は不要だった。

昔のタイトルホルダー程度では、現役の名人より強いソフトは負ける確率は

相当低いでしょう。

 

これまで戦った棋士は、かなりの時間をソフト対策に費やしている訳ですが、

それを全くの無駄にされては堪らないと棋士側が思うのは当然でしょう。

 

又、本番とは違うソフトを時間をかけて研究する事に意味は少なく、

普段の棋戦を犠牲にする程のめり込む人間も少ない訳で、

それはお互いにとって良い事なのでしょうか?

 

第三回電王戦から採用された ソフト提出後の変更は認めない

              対局者は本番と同じ環境で練習対局が出来る

は将棋連盟からの提案を受けた主催者判断での採用と見るべきでしょう。

 

このルールが追加された事によって、出場棋士は必死にならざるを得ない

状況に追い込まれました。

 

その点に関しては、開発者側にもメリットはあった筈です。

デメリットだと思われていた、練習対局通りの指し手が

本番でも繰り返されるんじゃないか?という事は杞憂に終わりました。

 

ところで、第三回電王戦時でも出場棋士の選定は棋力を基にしていたと思われます。

通常の棋戦をこなしながらソフト対策を行う事は体力面がものを言うので、

対策に費やす時間が棋士によって大きな差がありました。

 

更に、団体戦の結果も2年連続負け越した事で、世間的には

ソフト > プロ棋士

という認識が一般化されたのかも知れません。

 

そうした流れを踏まえて、電王戦Finalの出場棋士は 棋力に体力面も考慮した

メンバー構成になっています。

 

盤面の先を読むプロ棋士の集団が、この展開を読めなかったのは

甘いのでしょうが、様々な意見を集約して方針を決めれば

後手、後手に回ってしまったのは仕方なかったかも知れません。

 

あえて今のルールに手を加えるのなら、対局本番の最初の1手を

開発者は指定出来る 一丸式 を公式ルールに組み込むか、

本番直前に立会人同伴の下で持ち時間の使い方の調整を可能にする位でしょうか?

 

 

時系列を追っていけば、電王戦というイベントは回数を重ねる毎に

収まるべきルールに収束したと思うのですが、如何でしょう?

 

【将棋】 電王戦Final前日 永瀬六段に向いた作戦が合ったw

今日の王将戦の最後で、永瀬六段が千日手宣言! を出したのか???

見たいな告知しているのを聞いて、ちょっと考えてみました。

前記事で ↓ の様に書いたのですが、

 

2戦目の永瀬六段は、振り飛車で戦えば終盤で逆転出来る可能性は高まる

居飛車を採用した場合は、優勢から押し切るか入玉形を目指す以外

勝ちは無いと予想しておきます。

 

ふと彼にピッタリな作戦があるじゃないか! と思い出しました。

 

プレイバック電王戦 Ⅰ (対 米永邦雄) - mgudn's

 

で書きましたけど、

コンピューターが数百万手読むという特性が全く活きない状態に持ち込む

新米永玉 この戦法 性格的に永瀬さん向きですよね?

 

考案者の米永永世棋聖は性格的には全く合ってなかったんですがww

 

ボンクラーズ戦 では 先手四間飛車 でしたが、

思想自体は今でも一番のコンピューター対策だと思うんですよね。

他の戦型でも基本思想に則った駒組みは可能じゃないか?とも思います。

 

現在の電王戦出場ソフトは特定の局面で毎回同じ指し手を選ばない様に

ランダム性を持たせて提出される事がセオリーになっています。

なので、ぶっちゃけ ランダムな指し手の内の一番緩い手を指す時が来るまで

千日手を狙い続けるのは、出来るかどうかは別にして一つの方法だと思います。

 

一般的に将棋の持ち時間は指し手を考える為に費やすのですが、

連続千日手が可能なら、条件が良くなるまで待ち続ける。

仮に16時を過ぎて引き分けになってしまっても、それはそれでしょうがない。

と割り切って対応出来る人が居るのならば、少なくとも

私は非情なまでにプロだと思います。

 

流石にこの妄想が実現するとは思っていません。

研究時間的に厳しいですし、千日手までの手順を見つけられなかった時に

どうするの?と言うリスクが髙過ぎますから。

 

米永永世棋聖が対局前に、渡辺竜王(当時)に作戦を話していて

渡辺竜王は 『 勝ち辛い戦型 』 と言ったと思います。

ただ、現状で 対コンピューター将棋戦において 勝ち易い戦型はあるの?

と言えば、それは非常に難しい質問ですよね?

(∩´∀`)∩わ~い♪ 飛車 の先に何があったのか?

は 結構、興味深いです。

 

明日の対局後に流れる PVで何らかの発言をしたのだと思いますが

何なんでしょうね?

明日の対局結果共々、気になります。 (o'∀')o†─Good☆night─†o('∀'o)

 

 

 

第二局終了後追記。

 

参りました。 私の見立ては甘かったと言わざるを得ないです。

例のトラブルの時間帯は呑気におでん(゚д゚)ウマー 

とか言ってて見逃してしまいました Orz

但し、メンタル面の異常なタフさを持っているから 新米永玉も

やれると思ってこの記事を書いたので、そこだけは間違ってなかったw

終盤でソフト相手に読み勝ちしてそれを満天下に知らしめたのは

素晴らしいと思います。

おいらは攻めに関しては良い勝負だと思っていたので、

こういった展開の対局が現れて助かりました。

成り・成らずの事に触れる記事が下書きに眠っていて、

うわぁ~何か後出しじゃんけん っぽく思われるのが勿体ないなぁ~

なまけずに、さっさと仕上げれば良かった。。。とこの展開に吃驚です。

 

それはさておき、

永瀬六段 おめでとうございます。

【将棋】 コンピューター将棋の限界2015

コンピューター将棋の限界 - mgudn's

を書いてから1年後の見解を書く。

 

今回の電王戦も ソフト>棋士 が絶対で後は連盟がいつそれを受け入れるのか?

なんて考えている方も一定数居るんじゃないかと思います。

 

 前回の結論は 

コンピューター将棋は道具である事から抜け出せる時は来ない

でしたが、それを将棋のルールと絡めてお話しします。

将棋は二人零和有限確定完全情報ゲーム - Wikipedia

に分類されるゲームですが、この中で将棋だけ別枠だと思っています。

最後の審判 (詰将棋) - Wikipedia ←の様な物が代表です。

個人的見解だと、将棋はある局面では最善が千日手、別のある局面では先手勝ち

の様に結論が1つでは無い様に感じています。

 

なので、

ルールが曖昧な将棋の結論を機械が下せる事は無い

に改める事にします。

 

即ち、コンピューター将棋は最強にはなれない可能性が高いです。

【電王戦FINALへの道】#71 稲葉陽 最後のインタビュー ‐ ニコニコ動画:GINZA

で稲葉七段も話していますが、終盤の入り口が苦手

と話している部分は 思考の切り替えが出来ない事に起因する本質的な弱点でして

おいらが指摘していた去年から変化は無さそうです。

(豊島七段が中盤を一気に飛ばす様な進行を狙ったというのも同義です。)

 

もう一点加えるならば、電王トーナメント等で

最善手を追っている筈なのに、プラス1000以上から

マイナスに一気に変化する光景を何度か見た事があると思います。

仮にコンピューター将棋が棋士を絶対的に超えているならば、

途中で0付近かちょっと不利程度で踏み留まれる筈なんですよね。

この部分はこの先も直らないと思います。

GPS将棋は序盤・中盤・終盤手前・終盤みたいに

探索を変えていたと思うのですが、この手法、切り替わるタイミングが

正確じゃないと意味無いですよね。

中盤ならまだしも、終盤で一手判断が遅れる事が将棋にとってどれ程の致命傷

になるかは、電王トーナメント決勝のポナンザを見れば判ると思います。 

 

今のコンピューター将棋の流れっていうのは、

携帯電話の歴史と似ていると思います。

携帯電話デビュー ⇒ 小型化 ⇒ 大型化 えw

 ボナンザが全幅探索でデビュー ⇒ 枝狩りで効率化 ⇒ 枝狩り無し えw

こんな感じをイメージしています。

 

人間の盲点になっている手を指摘してきたコンピューター将棋が

自身も盲点になっている手が有る事を無視している事なので、

効率化が行きついた後は、枝狩り部分を減らす事になっていきそうです。

 

 

電王戦Final前に ソフト 対 棋士 で思う事は

 

ソフト>棋士の部分はあります。

受けに廻った時の指し手の精度ではソフトが勝っていると思います。

今まで見ていた感想としては、攻めの鋭さと守りの危険許容度は

同じ位ではないか?と感じていて、

例えば攻めの鋭いソフトの筆頭だと思われているポナンザは

危なっかしい玉でも有名じゃないでしょうか?

手厚い攻めのツツカナは受けの形も手厚かったと思うんですよね。

 

数値で表すと (数字が多い方が強いとかではありません)

ポナ・Aprey  攻め 80  危険度許容 80

AWAKE        65        65

プロ棋士平均像      70        30 

  (糸谷竜王佐藤康光九段とかの例外は除くw)

こんなバランスだと思うんですよ。

 

プロ棋士の定跡の進化(更新)とは今までに無い攻めのパターンの発見でして

攻めの精度はソフトと良い勝負の戦型があるし、ある戦型では勝っている。

ところが、攻めの精度程には受けの精度が高い棋士は皆無に近いと思います。

受けに定評のある森内九段の勝ちパターンは受けつぶしではありません。

受けに回る事に嫌悪感が無い程度の物で、受けてからの急襲で勝っている事が

殆どです。

 

電王戦が開催されて、プロ棋士がコンピューター将棋を取り入れて

研究や練習対局を行う事が常識になった頃の奨励会員がプロ棋士になる頃には

少なくとも、棋士の平均バランスは

 

プロ棋士平均     攻め 70  危険度許容 50

 

こうなる可能性が高い様な気もします。

 

プロ棋士における 玉の危険許容度は スペシャリスト程高くなります。

森下九段はツツカナと矢倉で1勝1敗ですが、

2回共に良い勝負だったと思うんですよね。

危険許容度を上げる為には何が有効かと言うと、

経験の蓄積なんですよね。特に例外的な形を経験してる程良いです。

 

対戦するソフトにどの戦型で戦うかを選ぶ基準は

駒組みで優勢を取る確率が高い物 で選ぶ棋士の方が多いと思うのですが、

自分が今までで一番実戦経験の高い戦型を選ばれた方が

終盤でソフトを逆転する可能性が高いと私は思っています。

 

居飛車党4名は普段の人間との対局にアレンジを加えるのでしょうが、

2戦目の永瀬六段は、振り飛車で戦えば終盤で逆転出来る可能性は高まる

居飛車を採用した場合は、優勢から押し切るか入玉形を目指す以外

勝ちは無いと予想しておきます。

 

最後に 渡辺竜王(当時) 対 ボナンザ は相穴熊の勝負でしたが、

この戦型、得意な方は

プロ棋士     攻め 70  危険度許容 70

を最も実現し易いと思います。

電王戦では未だ出て来てませんけどね。

【将棋】 電王戦 2016

開幕まで1週間を切っている電王戦Final。

団体での勝負は今回で最後になる事は確定している。

 

渡辺二冠は 誰か(タイトルホルダー)がやらないと~~

と言う発言をした事もありますし、開発者で羽生さんと

戦いたい旨の発言をされている方もいます。

そもそも、団体戦が終わった後の事は現在未定です。

 

現状、今の電王戦の時期は名人戦と被りますし、

(日程は多少被る程度ですが、準備期間が丸被り)

番勝負を一人で行う場合対戦の間隔をどうするのか?

だけでも様々な意見が出そうです。

では時期をずらせば良いか?と言うとやはりこれも難しい面があって

羽生・渡辺の両者は無冠になる事は確率的に低いでしょうが、

電王戦時期にタイトル挑戦している可能性が避けられません。

糸谷竜王は出場が決まって対戦するまでにタイトルを失う可能性を

懸念される事でしょう。

 

では、どうすれば良いのか?

ルール・時期は電王戦Finalを引き継ぐものとして妥協案を考えてみました。

 

① 出場が決まったソフトを本番仕様にした上で、

  本番と同じ時間で対戦したログを対局者は入手出来る

② ①において対戦相手は電王トーナメント1~5位と

  1位との対戦ログとする

③ ②を行う期間はソフト提出3日後~対戦3日前まで

  毎日、対局が終了すると速やかに対局者に届ける事とする

④ 対局者が望めば、対局ソフト以外の電王トーナメント入賞ソフトとは

  自由に対局出来る環境をドワンゴ社が用意する

 

こんな感じでしょうか。

実際の対戦相手とは直接指す事は出来ないけれど

本番で全く同じ進行をする可能性とその時のソフトの思考ログを

確認出来る。

一部有利・一部不利にしてバランスを取ったつもりです。

 

阿部四段(当時)が戦法を絞り込んだ上で1日2局、

本番通りの持ち時間で対局を重ねていたにも関わらず

本番では同じ進行を辿る事は無かった や

練習対局を1000局程重ねた豊島七段が本番では

未知の局面に行きついたりしていますので、

再現性の点は問題無いでしょう。

 

1位 VS 1位~5位なのは 2~4位に大きく勝ち越したとしても

1/5 の割合で負けパターンも確認出来る様な配慮です。

 

忙しいであろう対局者が移動の時間でも対コンピューター将棋戦の

準備が出来る様にするにはこんな感じでやらないと厳しいんじゃないかな?

 

 おいらは基本的に、コンピューター将棋 VS タイトルホルダー

は実現しなくて良いと思っています。

 

実現しなくても良いとは思っていても、対戦するならどんな戦型を

選ぶのか?は興味があったりして困るw

 

そして下書きで半年以上眠っている王座戦5局の答え合せや

年末のリベンジマッチの書きかけをUPするタイミングを

完全に逃してしまってどうしたもんか とも思っている。

 

あぁ。 直ぐに土曜日が来てしまうに違いないw

【将棋】 羽生善治の現在 ~羽生と持ち時間~

【将棋】 羽生善治の現在 ~羽生と研究~ - mgudn's

の内容と多少被りますが、持ち時間が異なる棋戦での違いについて。

 

一般的に羽生さんは、 1日制の将棋>>2日制の将棋 だと思われている風潮がある。

 

おいらはこれは違うと思っていて、 タイトル防衛戦 >> タイトル挑戦

こっちだと思っている。

タイトル保持者として戦う時のみ対局数の後半にかけて

難しい将棋より負けない将棋が増えるからである。

挑戦している際には案外、面白い将棋・試したい将棋 > 負けたくない将棋

の傾向が強く最終戦でも普通に実験的な将棋を見る。

 

竜王戦との相性が悪いと思われている節があるが、

これも案外的外れだと思っている。

 

1組在籍の棋士が考える事。

それは、羽生さんを倒せば次に当たるのは挑戦者決定戦まで無いという

竜王戦の特性をしっかり活かす事。

順位戦でも当たる人は特に竜王戦に照準を合わせて来ませんが、B1以下の方は

絶対に対策をしっかりして来ます。

 

なんで言い切るかと言えば、竜王戦が賞金が一番高いからですね。

中堅クラスの棋士ならここで1勝するかどうかで年収がガラリと変わります。

順位戦は地道な勝ち星の積み重ねが必要なので、誰に勝っても1勝は1勝。

あえて強い奴に必勝の体制で臨む理由がありません。

そして、相手が対策して来ているなぁ~と思った際の羽生さんの対応は

基本的にそれがどんな局面のどんな手か見ておく人なので、

竜王戦では基本的に作戦負けからスタートする事が増えます。

なので相性が悪いというのとは違うと考えています。

 

 2日制の場合、ある局面で羽生さんが最善はこの手だろう!と断定した上で

ではその前で変化した場合はどうなるのか? とか 

最善以外で進めたらどうなるのか? を実戦で試している場合が、

1日制と比較して増える(時間的な余裕が有る為)ので

勝敗の結果として、1日制の方が強い様に感じるだけだと思います。

 

丁度良いタイミングで王座戦の第五局がもうじきあります。

防衛戦の最終局、羽生さんが最も勝ちに拘る将棋を指すとすれば、

このタイミングになりますので、作戦選択、指し手の選び方、時間配分等

注目してみたいと思っています。

【将棋】 羽生善治の現在 ~羽生と電王戦~

当たり前の話だが、棋士であれば、電王戦と自身との関係は考えざるを得ない。

歴史上最高の棋士であろう羽生さんも当然の如く影響を受けている。

 

それは対戦相手としての自分が出る場合とコンピューター将棋の特性を

自分にどう取り入れるか?の2パターンがあると思っていて、

ここでは後者の事についてのみ書き綴ってみる。

 正直、前者は無いと思う。あれば見たいのは勿論だが、

仮に勝った所でそれで終わる訳ではあるまい。

翌年も続き、負けるまで終わらない。そこにはもう意味がないと思うから。

 

過去の羽生マジックと言われる手を全部コンピューターが上位候補に挙げられるならば

それでもう勝ちで良いじゃんって感じですね。

 

さて、本題。

 名人戦での将棋を見て、森内さんの待ちの戦術に羽生さんが

暴発ぎみに攻めて負けるパターンのが何年か続いている旨の事を思っている方が

そこそこ居た様に思いますが、当然、本人も自覚してやっています。

2手目△6二銀は損だが、どれぐらい損であるか見極めるために指した。どれだけ損であるかがわかったので、もう指すことはない。 Wikiより引用

こんな事言う人ですからねwww

将棋の歴史に残るような絶妙手は、普通は有り得ないんだけど、

例外中の例外で有り得る局面で出る手なので、羽生さんが可能性を感じた際には

強引に攻めていた時期がありました。

但し、これってほぼ中盤での話だったんですよね。

ところが最近は終盤に入ってから、ここで勝ちが有りそうって局面から

一気に勝負を付けに行って、失敗する例が見受けられます。

安全勝ちを捨てていると言っても良いでしょう。

最近の例では、木村八段との王位戦や、糸谷七段との竜王戦挑決。

 

あの将棋を見て、羽生さんの終盤が衰えたと勘違いしては駄目ですよw

あれこそが、羽生さんがコンピューター将棋の特性を取り入れている部分ですから。

 

コンピューターには恐怖感って無いですからね。

相手がコンピューターと言う状況を想定するなら、

怖いから安全にと言う思想は既に敗北という棺桶に足を入れている状態だとでも

思っているんじゃないでしょうか?

 

渡辺二冠が 『 羽生さんだって流石に全て読み切って指している訳でも無い

       はずなのに、勝ちに近づく手を選び取っている 』

と言う旨の発言をしていた事が有ったと思いますが、

合理主義者の渡辺さんは安全に勝てる場合は徹底して安全策を取る方ですし、

勝ちか負けか判らない場所へ平気で飛び込んでいく羽生さんとそういった場面で

差が出るのは、経験値の差じゃないですかね?

 

但し、渡辺さんの強みは徹底した合理性にあるので、そこで勝負せざるを得ない

状況になる事自体が不本意なんでしょうけどね。

 

後もう一点。

コンピューター将棋は基本的に一番評価の高い手を選びます。

そこで羽生さんは序盤であえてプラスの手を指さない事にも取り組んでいます。

【将棋】 羽生善治の現在 ~羽生と研究~ - mgudn's

でも触れた手待ちの概念とかですね。

コンピューター将棋はあえてプラスを選ばないという事は出来ませんので、

人間同士の対局でしか現れない将棋をファンに見せたいとも思っている様です。

今期の名人戦はそういった狙いも持ちつつの将棋だったとおいらは理解しています。

 

ここ数年で勝ち方が有り得ないほど鋭い将棋も何局か見受けられますし、

羽生さんの中でそのギリギリのバランス感覚を構築出来た際には

どうなってしまうんでしょうか?

『 直感は経験から出来ている 』 『 運命は勇者に微笑む 』

という自身の発言を体現して欲しいと思います。

 

【将棋】 羽生善治の現在 ~羽生と研究~

羽生さんの対局や講演のスケジュールを見て

一体いつ将棋の研究をしているのだろう?

と思われている方って結構居ると思う。

 

それをおいらなりに予想してみる。

 

棋士の言葉から研究と言う言葉は結構な頻度で使われるんだけど、

この ” 研究 ” って2種類ある。

 

棋士がほぼ100%の確率でやっているであろう事は

タイトル戦の棋譜を並べて自分なりに考える事であろう。

そこで、どこが敗因でそれをどこまで遡れば良いのか?

先手側の対応、後手側の対応を考えその対応策に更に対応策が無いか

考える。 ひたすらそれの繰り返し・・・これが一つ

研究の範囲が広いと言われる場合この棋譜を自分なりに理解する範囲が

棋士棋譜の公式、非公式まで及んで居るのだろう。

 

次が、対戦相手の研究(以下このパターンは準備と表記する)

これは上記の内容を対戦相手に絞って調べる事。

誰と戦う時にどんな作戦を取るのか?

その時に準備した物は何なのか?

最近取り組んでいる物があるのか?

等々を読み取る作業を行う。

 

では、羽生さんは研究・準備はしているのか?の回答

研究はしていないが、準備はしている。で合っているはず。

 

羽生さんの言葉に 『 将棋は他力 』 という言葉がある。

自分でいくら考えても相手が自分の想定内になる事は少ない

例えば、自分の指し手が難しい時は有効な手を探さずに相手に考えて貰おう!

これがいわゆる手渡し。

それを研究の面でも使っているのが見受けられる。

近い例でいうと棋王戦での永瀬六段2連戦、去年までの名人戦

羽生さんは自身が持っているタイトルの開幕から数戦、

それ以外の棋戦で、相手の研究を実戦で教えて貰おうw

をやっている時があって、若手との対戦で最初に負けるパターン

が多いのはこれです。

 

若手の有力、若しくは勉強熱心だと棋士間で有名な人の場合

どこまで深く研究しているか?又その精度はどうなのか?を確認しておく。

今後大きな舞台で戦う時の為の準備に充てていると思われます。

羽生さん相手に無策で臨む若手の方なんてまず居ないでしょうから

それなりの頻度で現れています。

 

又、森内さんとの名人戦の場合は森内さんの棋力、研究精度を把握しているので

現れた戦型でここから先は考える必要が無い、

いわば、通行止め確認に利用している節が感じられます。

 

相手の研究も利用する。 まさに他力www

それでも勝率が落ちないのが羽生善治w 恐ろしいです。

 

では、羽生さんが研究する場合ってあるのか?

これは研究をアイデアという言葉に変えれば有るといえます。

 

3冠対決の棋聖戦・今期の名人戦がそれです。

普通の方がやってる深く精査するではなく、ここでこうやったらどうなるんだろう?

一寸考えてみたけど難しい ⇒ なら実戦で考えよう!

この程度で盤前に座りますw

 

対局後に ”つまらない将棋にしてしまった” 

ってたまに羽生さんが使いますが、これは

自身のアイデアが面白そうだと思ったけど案外難しいだけだったね(´・ω・`)ショボーン

を表現した言葉だとおいらは思っていて、そう考えれば

色々な場面での整合性が取れると思います。

 

又、性質が悪いのは、それを余り現れない(勝率が悪いので採用される機会が減った)

戦型で考える事が多いので、相手側からすれば

何をやってくるのかまるで予測が立たない事。

どの時期のどの戦型から出るか判らないので対策なんて立てようが無い。

 

タイトル戦で出た局面は誰でもやっているので、それは人に聞けば(対局)良い。

自分は人がやらない事をやれば良い。

将棋には可能性が埋まっている、それを開拓していくのが自分の使命。

七冠を達成している羽生だけが許される行動、思考だと思うんです。

 

永世七冠を目指すなら負けられない筈の今期の竜王戦挑戦者決定戦。

糸谷七段相手に羽生さんが研究をぶつけるのか期待してみていましたが、

普段通りでしたwwww

将棋ファン(読売新聞担当者もw)は期待していたと思いますよ。

初戦は海外対局ですしね。

周囲の期待を余所に余計な事に捕らわれない。

 

3冠対決の場合も周囲が棋界初だ!と盛り上げたので、しっかり準備して

全局で羽生ペースでした。

渡辺さんを特別視してでは無かったのは、その後の王将戦の戦型を見れば

間違いないでしょう。

 

又、アイデアは対戦相手との対局から得ている場合もあります。

棋聖戦での振り飛車はその前の王位戦での 対 藤井九段戦からの発想であり

当時、渡辺さんが対振り飛車での勝率が低い事を理由に戦型を選んだ

というのは誤解でしょう。 その後の対渡辺戦を見れば明らかでしょ。

 

王位戦で手待ちをどこに組み込むか?という発想を

作戦家の藤井さんから得て、横歩に取り入れたのが、先手で68玉⇒58玉の対局。

そして当たり前の話ですが、電王戦からも発想を得ています。

(それは別に書きます)

 

以上、こんな所が羽生さんの研究とのスタンスだと思います。

結構な暴論だと思いますが、そこそこ良い線で迫っていると思うんですけどね~w

 

9・23日 追記

 

羽生さんがしっかり準備をする対局の事を書き忘れていました。

想像つくと思いますけれど、A級順位戦ですね。

先後も予め判っているので、この戦いでは、事前準備をしています。

で、戦績ご存じですかね?

3年間で25勝2敗 勝率.925 クレイジーwww

勿論、勝ちに近い作戦を取っての戦績ではないのが呆れる所です。

実際問題、負けに等しい状態からの逆転勝ちもあります。

それでも他の棋戦よりは勝ちに対して貪欲で負けない将棋を指していますね。

以上 追記でした~。