菅井5段の発言の信憑性
本日より第三回電王戦が開催されます。
この対局の結果がどうあれ、出場棋士中の菅井5段が放った
「自分は10年ぐらいしたら
人間の方が強いんじゃないかと思いますね
うなずいてくれる方は居ないんじゃないかと思いますけど・・・」
と言う言葉においらは半分同意します。
プロ棋士同士の戦いと言うのは、基本的に先手も後手もどっちでも勝てる可能性が有る
形へと既にほぼ収束しています。
この状態を持って定跡※1と呼びます。
※1(どちらか一方だけが有利に進めていた物が相手が対応策を編み出した為に
双方がある程度、不満無い形で進行する手順。)
コンピューター将棋とプロ棋士の戦いで多いパターンはPC側が先に攻めて
人間側が受けに回る事ですよね。
プロ棋士同士の戦いをボクシングに例えると、リング中央でファイティングポーズを取っている状態でしょうか。
双方負けたく無いので1R開始直後から相手を倒すパンチを打つより
隙を見つけようとしたり、フェイントを入れたりする事から始める事が多いです。
ところがコンピューター将棋 VS プロ棋士の戦いの多くの場合
同様にボクシングで例えると
コンピューター側がリングのコーナーに詰め寄った状態から戦う事に似ています。
どうしてそうなるかと言えばリング中央で戦うより、プロ棋士にとって
稼動範囲の少ないコーナー側に追い詰める方が評価的には高くなりそうだからです。
負けたく無い人間がゆっくりしている内にコンピューター将棋がぐんぐん距離を詰めてくる
ので人間が受ける展開が多くなってしまいます。
現状だと双方攻撃力の高いけれどもそんな場所で戦う事を想定していなかった
プロ棋士の距離感の違いで第二回はPC側が勝ち越しましたが、
認識を変える事、戦場の違いに慣れる事、相手の攻撃手筋を見に着ける事で
十分に人間が勝てる可能性は残していると思います。
但し、プロ棋士が 対 コンピューター将棋に注力する事で人間同士の対戦に
プラスの働くかと言えばそれは非常に薄いと思います。
負けても良いから攻めておきたい人間など、プロの世界には居ないからです。
今回の電王戦の結果は判りませんが、プロ棋士が勝ち越すとしたら
持ち時間の変更の方がより重要なのでは無いかとおいらは考えます。
特に夕食休憩が取れる事ですね。
佐藤慎一4段 船江恒平5段の敗戦は夕休があればどうなっていたか判らない将棋
でしたしね。
従って、現状のまま進むとコンピューター将棋側の強さの伸びが少なくなり、人間側が
それとの戦いに慣れるので良い勝負が続きそうだと言うのがおいらの認識です。
決してコンピューター将棋が強くなり過ぎて人間では歯が立たない状況に追い込まれるとは
思いません。
さて今、菅井5段 VS 習甦 開場直前にこの記事を書き終えた訳ですが
これから毎週末 楽しみですな。
追記
初戦見ました。
開始日時:2014/03/15 10:00
終了日時:2014/03/15 20:19
棋戦:第3回電王戦第1局
持ち時間:各5時間
消費時間:▲4時間39分△4時間01分
場所:東京都江東区「有明コロシアム」
先手:菅井竜也五段
後手:習甦
▲7六歩 △8四歩 ▲5六歩 △3四歩 ▲5八飛 △6二銀 ▲4八玉 △4二玉 ▲3八玉 △3二玉
▲5五歩 △4二銀 ▲7七角 △5二金右 ▲6八銀 △6四歩 ▲5七銀 △6三銀 ▲5六銀 △1四歩
▲2八玉 △7四歩 ▲1六歩 △4四歩 ▲3八銀 △3三角 ▲4六歩 △4三金 ▲7八飛 △7二飛
▲6六歩 △2二玉 ▲5八金左 △3二金 ▲6八角 △5四歩 ▲同 歩 △4五歩 ▲同 歩 △5四銀
▲5五歩 △同 銀 ▲同 銀 △同 角 ▲6七金 △5三銀 ▲7七角 △3三角 ▲4八飛 △4六歩
▲6五歩 △同 歩 ▲4六飛 △5五銀 ▲3六飛 △4二飛 ▲5七金 △5四銀 ▲4四銀 △同 金
▲同 歩 △4五銀打 ▲5三金 △4四飛 ▲2六飛 △5二歩 ▲5六歩 △6六銀 ▲同 金 △同 歩
▲5二金 △4八歩 ▲3九金 △4三銀 ▲5三金 △4九金 ▲同 銀 △同歩成 ▲同 金 △3五銀
▲5五銀 △2六銀 ▲同 歩 △7九飛 ▲3八銀 △8九飛成 ▲8六角 △3五桂 ▲4四銀 △同 銀
▲4三金打 △4九龍 ▲3二金 △1三玉 ▲4九銀 △2七銀 ▲3九玉 △6七歩成
まで98手で後手の勝ち
私見ですが、先に書いた様にゆっくりしてたら攻められたパターンだと思います。
先手を持ったら攻めて欲しかったです。
例えばの話ですが、菅井さんが今のタイトルホルダーを相手に指す場合、
受け切りを目指すとは思えません。
①認識を変える事 ⇒ コンピューター将棋と思わずタイトルホルダーと戦うつもりで
②戦場の違いに慣れる事 ⇒ 超急戦を視野に序盤から打ち合う事
③相手の攻撃手筋を見に着ける事 ⇒ そのまま
10年後に勝つならこの姿勢で臨んで欲しかったですね。