【将棋】 電王戦ルールがソフト貸し出しありになった理由
電王戦Final 第一局 終了後に Apery開発者の方が
事前貸し出しルールについて多少語っていました。
電王戦を見ている方、参加されている方(開発者)が何故このルールが導入されたか
判っていない方が多い様な気がします。
事は第一回電王戦まで遡ります。
米永永世棋聖がボンクラーズと対戦する際にソフトを貸し出しています。
に詳細が書いてありますが、その際に
1 入玉処理は削除。
2 評価関数を入れ替え。
3 コンパイラの変更。(処理速度が落ちる)
4 本番はPC複数台 練習機は1台
現在の電王戦出場ソフトは指し手にランダム性を持たせる事に
開発者が工夫を凝らしていますが、当時の開発者の狙いも
練習と本番で全く同じ進行になる事は避けたいと思って上記の行動に出ました。
翌年の第二回電王戦にこの問題が引き継がれます。
当時のソフト提出は開発者に決定権がありました。
ほぼ本番に近い物 1年前の物 貸し出しを良しとしない方もいました。
そして、その弊害が 第四局 塚田泰明九段 vs Puella α (旧ボンクラーズ)
で表面化します。
塚田九段に貸し出したソフトは米永永世棋聖に貸し出したソフトと同一でした。
このソフトで練習対局を行っていた塚田九段はPuella α と言うソフトは
王手でもされない限り、囲った後の玉は基本的には動かない
と誤認識して対局に臨みます。
第2回 将棋電王戦 第4局 塚田泰明九段 vs Puella α - 2013/04/13 09:30開始 - ニコニコ生放送 記者会見の質疑応答を見ていればこの辺りの事は判ります。
そして、この対局や質疑応答での発言が貸し出しルールに繋がっていきます。
一つは 第三回電王戦のルール作成に当たって、塚田九段など出場棋士に
意見を求めた事。
もう一つは 開発者がコンピューター将棋の強さは
パソコンの台数に比例するので、お金で強さを得られると発言した事です。
電王戦ルール - mgudn's で私の想像で誰がルールを作ったか?書いていますけれど
ドワンゴ社としては、ソフトを使って興業する権利面を押さえる事と、
パソコンの在庫を持たなくて良いメリットは譲る理由が無く、
統一ハードの導入は ドワンゴの都合。
ソフトの貸し出しがルールに組み込まれた理由は、団体戦で負けた将棋連盟が
プロ棋士に有利なルールを作った と思っている方が居るのだと思いますが、
残念ながら、開発者の行動に起因します。
当時のPVで Puella α の開発者は
(レーティング的には) ソフトは名人を超えている
と発言しています。
この発言に自信があるなら、細工は不要だった。
昔のタイトルホルダー程度では、現役の名人より強いソフトは負ける確率は
相当低いでしょう。
これまで戦った棋士は、かなりの時間をソフト対策に費やしている訳ですが、
それを全くの無駄にされては堪らないと棋士側が思うのは当然でしょう。
又、本番とは違うソフトを時間をかけて研究する事に意味は少なく、
普段の棋戦を犠牲にする程のめり込む人間も少ない訳で、
それはお互いにとって良い事なのでしょうか?
第三回電王戦から採用された ソフト提出後の変更は認めない
対局者は本番と同じ環境で練習対局が出来る
は将棋連盟からの提案を受けた主催者判断での採用と見るべきでしょう。
このルールが追加された事によって、出場棋士は必死にならざるを得ない
状況に追い込まれました。
その点に関しては、開発者側にもメリットはあった筈です。
デメリットだと思われていた、練習対局通りの指し手が
本番でも繰り返されるんじゃないか?という事は杞憂に終わりました。
ところで、第三回電王戦時でも出場棋士の選定は棋力を基にしていたと思われます。
通常の棋戦をこなしながらソフト対策を行う事は体力面がものを言うので、
対策に費やす時間が棋士によって大きな差がありました。
更に、団体戦の結果も2年連続負け越した事で、世間的には
ソフト > プロ棋士
という認識が一般化されたのかも知れません。
そうした流れを踏まえて、電王戦Finalの出場棋士は 棋力に体力面も考慮した
メンバー構成になっています。
盤面の先を読むプロ棋士の集団が、この展開を読めなかったのは
甘いのでしょうが、様々な意見を集約して方針を決めれば
後手、後手に回ってしまったのは仕方なかったかも知れません。
あえて今のルールに手を加えるのなら、対局本番の最初の1手を
開発者は指定出来る 一丸式 を公式ルールに組み込むか、
本番直前に立会人同伴の下で持ち時間の使い方の調整を可能にする位でしょうか?
時系列を追っていけば、電王戦というイベントは回数を重ねる毎に
収まるべきルールに収束したと思うのですが、如何でしょう?